「IT業界って結局なに?」5分でわかる業界の全体地図

「IT業界って結局なに?」5分でわかる業界の全体地図
「IT業界に興味があるけれど、どんな会社があるのか、何が違うのか、よく分からない」。そう感じる方も多いのではないでしょうか。IT業界には「SIer」「Web系」「SaaS」「コンサル」「SES」など、多くの用語が飛び交います。初めて触れる人にとっては、分かりにくい世界に見えるかもしれません。

この記事では、「IT業界&エンジニアのお仕事図鑑」シリーズの第1回として、IT業界全体を図解とともに分かりやすく解説します。読み終えるころには、「自分はどのあたりに興味があるか」のあたりがついているはずです。
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1. IT業界が「分からない」のは、なぜ?

初めてIT業界に触れる方が「IT業界はよく分からない」と感じるのには、理由があります。それは、IT業界の用語に、「会社のタイプ」「ビジネスモデル」「働き方」「使う技術」を示すものが入り混じっているからです。
 

たとえば、次のような具合です。
 

  • ・「SaaS(サース)」はビジネスモデル(クラウドでサービスを提供する形)

  • ・「SIer(エスアイヤー)」は会社のタイプ(システムを作る会社)

  • ・「Web系」は技術領域(Webサービスを扱う領域)


これらが同じ並びで語られると、頭の中が混乱するのは当然でしょう。本記事では、統一されたシンプルな軸でIT業界を解説します。

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2. IT業界を「何のためにITを使っているか」で3つに分ける

複雑に見えるIT業界を整理する最もシンプルな軸は、「何のために、ITを使っているか」です。この軸で見ると、IT業界は3つの区分に分けられます。


なお、実際には複数の区分にまたがる会社もあります。まずは「主力の事業がどれか」で大まかに当てはめれば問題ありません。
 

IT業界の3区分

区分①|自社プロダクトを作る企業(自社商品のためにITを使う)

■ どんな会社か

自分たちで企画したサービスを、自分たちで開発・運営する会社です。冒頭で出てきた「SaaS(サース)」も、クラウドでサブスクリプション型のサービスを提供するビジネスモデルの呼び名で、その多くがこの区分①に入ります。

■ 具体例
  • ・メルカリ(フリマアプリ)

  • ・楽天(ECサイト・楽天市場)

  • ・サイボウズ(kintone、Garoonなどの業務向けサービス)

  • ・freee(会計クラウド)

  • ・ディー・エヌ・エー(Pocochaなど多数のサービス)

  • ・クックパッド(レシピサービス)

■ 仕事の特徴

自社のサービスを良くするために、企画・開発・改善のサイクルを回します。ユーザーの反応を見ながら、サービスを成長させていくのが日常です。技術選定の自由度が高く、新しい技術を取り入れやすい環境も多くあります。

■ この区分にいる主なエンジニア

自社サービスを構成する技術ごとに、専門のエンジニアが分業しています。「Web系エンジニア」「アプリエンジニア」と呼ばれることが多く、技術領域で分かれているのが特徴です。代表的な職種を、下の表にまとめました。

職種 何をする人か
フロントエンドエンジニア ユーザーが見る画面・UIを作る(HTML/CSS/JavaScript)
バックエンドエンジニア ユーザーから見えないデータ処理・サーバー側のロジックを作る
フルスタックエンジニア フロントもバックも両方を担う。特に小規模チームに多い
モバイルエンジニア(iOS/Android) スマホアプリを専門で開発。スマホ中心の会社に多い
インフラエンジニア/SRE アプリが動く土台(クラウド・サーバー)を担当
データエンジニア/機械学習エンジニア データ分析基盤やAI機能を担当
QAエンジニア 品質保証・テスト自動化を担当
■ 働く環境のイメージ

リリースのサイクルが早く、スピード感があります。自分が作ったサービスがユーザーに直接届く喜びを感じやすい環境です。フラットな組織が多く、若手でも意見を出しやすい会社が目立ちます。

■ 未経験での就職難易度

この区分のエンジニア職は、新卒であっても「プログラミングの実務経験」や「開発経験」を募集要項で求める企業が大半です。そのため、プログラミング未経験の新卒が、いきなりここでエンジニア職の内定を得るのは難しいといえます。


ただし、「一生入れない」という意味ではありません。まず次に紹介する区分②の他社プロダクトを作る企業でエンジニアの実務経験を積み、その後にこの区分①自社プロダクトを作る企業へ移るキャリアも一般的になっています。

区分②|他社プロダクトを作る企業(クライアントのためにITを使う)

■ どんな会社か

SIer(エスアイヤー)やSES(エス・イー・エス)など、クライアント(他社)の依頼を受けて、システムやサービスを開発したり、そのための技術力を提供する会社です。クライアント先に常駐してエンジニアとして働く会社も、ここに含まれます。

■ 具体例
  • ・NTTデータ、富士通、NEC、IBM(SIer)

  • ・アクセンチュア(コンサル × SIer)

  • ・システナ、アルプス技研(SES)

■ 仕事の特徴

クライアントが「こういうシステムを作ってほしい」と依頼するところから始まります。要件定義から設計、開発、テスト、運用というシステム開発の流れの中で、その一部、もしくは全体を請け負います。企業によっては金融や公共、流通など、特定の業界に強みを持っていることもあります。

■ この区分にいる主なエンジニア

システムをチームで段階的に作り上げるため、プロジェクトの工程ごとに役割が分かれています。「SE」「PG」「PM」など独自の呼び方があり、Web系の「フロントエンド」「バックエンド」とは違う職種体系です。違いを、下の表で確認しましょう。

職種 何をする人か
システムエンジニア(SE) 要件定義・設計・全体管理を担う。クライアントとの交渉や調整も多い
プログラマー(PG) SEが書いた設計書に基づいてコードを実装する
インフラエンジニア サーバー・ネットワーク・データベースの構築・運用
テストエンジニア システムの動作検証・品質確認
プロジェクトマネージャー(PM) プロジェクト全体の進捗・予算・人員を管理
ITコンサルタント クライアントのビジネス課題の整理から関わる
■ 働く環境のイメージ

企業によりますが、大規模システムや公的サービスに関わることができ、影響力の大きさがあります。クライアントとのやり取りが仕事の重要な部分を占め、対人スキルが磨かれるのも魅力です。プロジェクト単位で動くため、チーム編成も都度変わります。

■ 未経験での就職難易度

新卒・未経験エンジニアの大半が、この区分からキャリアをスタートします。求人の母数が多く、研修制度が整っている会社も多いためです。プログラミング未経験でも、研修での教育を前提に採用する会社が多いため、未経験スタートの定番といえます。


ここで土台を作り、ゆくゆくは区分①の自社プロダクトを作る企業や、同じ区分内のITコンサルタントとしてキャリアを築いていくこともできます。なお、同じ区分②でも、大手SIerや中堅SIer、SESでは、年収や任される仕事に大きな差があるのも事実です。

区分③|ITを使ってビジネスをする企業(社内システムのためにITを使う)

■ どんな会社か

本業はIT企業ではないものの、自社の事業のために社内にIT部門を持ち、システムを内製したり管理したりしている企業です。具体的には、社内のリモートワーク環境を整えたり、勤怠管理や在庫管理など専用の業務システムを作成・管理したりしています。

■ 具体例
  • ・メガバンク(三菱UFJ・三井住友・みずほ)

  • ・大手商社(伊藤忠・三井物産・住友商事)

  • ・製造業(トヨタ・パナソニックなど)の情報システム部門

  • ・大手小売(イオン・セブン&アイ)のIT部門

■ 仕事の特徴

自社の本業(金融・小売・製造など)を支えるシステムを、作ったり運営したりするのが主な仕事です。外部のSIerに開発を依頼することもあれば、自社で内製することもあります。その企業が属する業界や、担当業務の知識が深く求められることも特徴です。

■ この区分にいる主なエンジニア

「事業会社の中のエンジニア」というポジションで、社内のITを支える役割が中心です。「コードを書く」よりも「使う側のIT統括」の側面が強く、「社内SE」が代表的な呼び方になります。主な職種は、下の表のとおりです。

職種 何をする人か
社内SE 社内システムの企画・導入・運用・保守。社員からの問い合わせ対応も担当
情報システム部門スタッフ 社内のITインフラ全般を管理(PC・ネットワーク・サーバー)
ITストラテジスト/IT企画 会社全体のIT戦略を立てる。経営に近いポジション
DX推進担当 既存業務のデジタル化・自動化を推進
業務系エンジニア(金融・製造など) 業界特有の業務システム(勘定系・生産管理など)を担当
ITベンダーマネジメント 外部のSIerに発注した開発の進捗管理・品質管理
■ 働く環境のイメージ

安定性が高く、福利厚生が充実している会社が多くあります。「IT企業」というよりも「事業会社の中のエンジニア」というポジションで、本業の知識が深く積み上がっていきます。

■ 未経験への現実的な話

新卒で「社内SE」として採用されるケースはありますが、未経験や文系では求人が限定的になりがちです。「IT業界」として意識されにくいかもしれませんが、エンジニアのキャリアにおいて選択肢のひとつとして覚えておく価値があります。
 

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3. 3区分でエンジニアの「呼び方」も違う

ここまで読んで、気づいた方もいるかもしれませんが、同じ「エンジニア」という言葉でも、3つの区分で職種の呼び方も役割も大きく違います。
 

たとえば、区分①自社プロダクトを作る企業の「フロントエンドエンジニア」と区分②他社プロダクトを作る企業の「SE」は、どちらも広い意味では「エンジニア」です。ただ、仕事の中身も役割も、かなり別物だといえます。
 

  • ・フロントエンドエンジニアは、画面を作ることに特化し、コードを書く機会が多い

  • ・SEは、要件定義や設計、クライアントとの調整業務が中心で、コードを書く時間はそれほど多くないこともある


「エンジニアになりたい」と考えたとき、どの区分のどの職種を指すかで、就活のターゲットは大きく変わります。逆に、3区分と職種を知っておくと、自分が興味あるのが「どんなエンジニアか」を絞り込めるようになります。

IT業界のエンジニア

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4. 3区分は「働き方」「身につくスキル」「キャリア」も違う

3区分は、「何のために作るか」が違うだけではありません。働き方や身につくスキル、キャリアの伸び方まで変わってきます。


たとえば「ユーザーの声からプロダクトを改善していきたい人」は、区分①の自社プロダクトを作る企業が向いています。「大規模システムや社会インフラを陰で支えたい人」は区分②の他社プロダクトを作る企業、「業界の深い知識を積みたい人」は区分③のITを使ってビジネスをする企業というように、自分の興味や働き方の好みで選ぶ軸ができます。比較のポイントを、下の表にまとめました。

観点 ①自社プロダクト ②他社プロダクト ③ITで本業を支える
仕事の中身 自社サービスの企画〜運用 顧客向け受託開発・常駐 自社業務システムの開発・運用
技術選定の自由度 高い(自社判断) 中(顧客指定が多い) 低〜中(既存システム重視)
業務スピード 速い(リリース頻繁) 中(プロジェクトの工程による) ゆっくり(安定運用重視)
身につくスキル 最新技術・サービス改善 大規模システム・対人 業界知識・運用ノウハウ
新卒未経験の入りやすさ 低い(経験者中心) 高い(研修ありで入れる) 中(総合職で入社後に配属)
報酬の伸び方 実力次第で伸びやすい 企業差が大きい 安定。水準は高めのことも

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5. 自分が興味あるのはどこ? 診断3ステップ

ここまで読んでも、「自分はどこに向いているか」がはっきりしない人もいるかもしれません。3つの問いかけで、自分の興味の方向を整理してみましょう。区分ごとに必ずしもこれに該当するわけではありませんが、大まかな方向性を掴むのに活用できます。

ステップ1:「自分のサービス」を作りたいか、「誰かの依頼」に応えたいか

まずは、何のために作りたいかを考えてみましょう。

こんな気持ちなら 向いている区分
「自分が作りたいサービスがある」「ユーザーの反応を見て改善したい」 区分①自社プロダクトを作る企業
「大きな仕組みを支えたい」「クライアントの課題を解決したい」 区分②他社プロダクトを作る企業
「特定の業界を技術で支えたい」「金融・製造などの本業に関わりたい」 区分③ITを使ってビジネスをする側

ステップ2:扱いたい技術領域は?

次に、どんな技術に触れたいかを思い浮かべてみましょう。

扱いたい技術領域 多い区分
最新のWeb技術・AI・モバイル 区分①自社プロダクトを作る企業
大規模システム・基幹システム・ミドルウェア 区分②他社プロダクトを作る企業
業務システム・社内ITインフラ 区分③ITを使ってビジネスをする側

ステップ3:働き方・キャリアの優先順位は?

最後に、働き方やキャリアで何を優先したいかを整理しましょう。

優先したいこと 向いている区分
スピードと自由度 区分①自社プロダクトを作る企業
安定と大規模 区分②他社プロダクトを作る企業または区分③ITを使ってビジネスをする側
業界知識を深めたい 区分③ITを使ってビジネスをする側

3ステップではっきり決める必要はありません。「自分はどちら寄りかな」というあたりがついていれば、サマーインターンの応募先を絞るときに役立ちます。

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6. まとめ

IT業界は、「何のためにITを使っているか」という軸で、「自社プロダクト」「他社プロダクト」「ITで本業を支える」の3区分に整理できます。この3区分では、仕事の中身や働き方、身につくスキル、職種の呼び方、キャリアの伸び方まで変わるのが特徴です。新卒・未経験の現実としては、区分②の他社プロダクトを作る企業からスタートする人が多いといえます。まずは、自分がどの区分に興味があるかを3つの問いかけで当たりをつけて、サマーインターンの応募に活かしてみましょう。区分の地図を頭に入れておくと、企業研究のスピードも上がっていきます。