新卒・未経験スタートのエンジニアのキャリアパスとは?時系列で解説【ITの仕事図鑑 #7】

ここまでの記事(#1〜#6)で、IT業界の全体像や職種、働き方のイメージは具体的になってきました。シリーズ最終回となる今回は、最後のテーマとして「未経験スタートからのキャリアの現実」を、時系列で見ていきます。
読み終わるころには、3年後・5年後・10年後の自分が、どこでどう働いているかのイメージが、具体的に持てるはずです。

\ITエンジニア特化の就活支援サービス/
\ITエンジニア特化の就活支援サービス/
1. 未経験スタートのキャリアは「最初の3年」で大きく変わる
未経験スタートのキャリアは、入社した瞬間ではなく、「最初の3年」をどう過ごすかで大きく変わります。
1〜3年目は、土台を作る時期です。この時期にどんなプロジェクトを経験し、どんな力を身につけ、どんな先輩に出会うか。それによって、その後のキャリアの選択肢が変わってきます。それ以降の道は、この土台の上に乗る形で広がっていきます。

とはいえ、「最初の3年で人生が決まる」わけではありません。キャリアは、何年目からでも軌道修正できますし、年数だけではなく任された役割や経験の幅が選択肢を左右します。あまり気負わずに読み進めてください。
\ITエンジニア特化の就活支援サービス/
\ITエンジニア特化の就活支援サービス/
2. 1〜3年目|SIerのSE・SESのプログラマーとして土台を作る
新卒・未経験からエンジニアになる場合、大半は#4で見たようにSIerやSESで「SE」か「プログラマー」からキャリアをスタートします。SIerは、ほかの会社から依頼を受けてシステムを作る会社です。SESは、自社のエンジニアがお客さん先に出向いて開発する働き方です。それぞれの1〜3年目のリアルを見ていきましょう。
SIerのSE(システムエンジニア)としてのキャリア初期
■ 1年目
・数ヶ月の研修(プログラミングの基礎、仕事の進め方、ビジネスマナー)
・プロジェクトに配属され、最初は先輩SEのサブとして、動作確認や設計書の修正を手伝う
・簡単なコードを書く作業から始める
■ 2〜3年目
・小さな機能の設計を任される
・クライアントとの打合せに、サブとして参加し始める
・プロジェクトの一部を主担当として動くこともある
■ この時期に身につく力
・要件定義書・設計書(何をどう作るかをまとめた書類)を読み書きする力
・開発の進め方(計画を固めてから順に進める「ウォーターフォール開発」の流れ)
・クライアントとやりとりする力
・担当した業界の知識
最初はテストやコードを書く工程、運用・保守から始めることも多くあります。若手のうちから要件定義を任されるのは、一部のケースです。
SESのプログラマーとしてのキャリア初期
■ 1年目
・数ヶ月の研修(プログラミングの基礎が中心)
・お客さん先の現場に配属され、最初は先輩について簡単な修正から始める
・コードを読み、書き、動かす日々
■ 2〜3年目
・機能ごとの実装(コードを書くこと)を任される
・いくつもの現場を経験することもある(現場が変わると、業界も技術もチームも変わる)
・小さな現場で、リーダー的な役割を任されることもある
■ この時期に身につく力
・実装の力(コードを読み、書き、直す経験の量)
・複数の言語や道具(フレームワーク=開発を効率化する道具のセット)に触れる経験
・違う現場やチームに合わせる適応力
SESでは現場によっては監視やテスト、運用、ヘルプデスク(利用者からの問い合わせ対応)など、開発・実装以外の仕事に配属されることがあります。SESに応募するときは、担当する業務を面談で確認しておくと安心です。
業態の違い以上に「会社選び」が大事
ここまでSIerとSESの違いを見てきましたが、大切なことをお伝えします。SIerかSESかという業態の違い以上に、「どの会社を選ぶか」で、経験できる内容は大きく変わります。
たとえばSIerでも、親会社向けの案件が中心の会社(ユーザー系)と、親会社がなく幅広い業界の案件を扱う会社(独立系)では、触れる業界がまったく違います。SESも同じです。お客さんから直接仕事を受けているか、間にいくつもの会社を挟んでいるかによって、関われる仕事の幅が変わります。
業態だけで判断せず、その会社で何を経験できるかを見ることが、3年目以降のキャリアを左右します。
\ITエンジニア特化の就活支援サービス/
\ITエンジニア特化の就活支援サービス/
3. 3〜5年目|「動くか、留まるか」最初のキャリア分岐点
1〜3年目で土台を作ったあと、3〜5年目は最初の分岐点です。多くの人が「同じ会社で昇進していく」か、「転職して環境を変える」かを考え始める時期になります。
同じ会社で昇進していく道
SIerの場合は、サブリーダー、リーダーへと昇進していく道筋があります。大手SIerは年功序列の場合もありますが、安定してステップアップできるのが特徴です。やがて、プロジェクトマネージャー(PM=開発全体の進行・予算・人をまとめる責任者)への道も見えてきます。中堅SIerでも、信頼を得れば早めにリーダーを任されることがあります。
SESの場合は、自社の中でリーダーやマネージャーになる道が一般的です。特定の技術に詳しいスペシャリストを目指すこともできます。自社開発のプロジェクトを持つ会社では、SESから自社開発側に移る道もあります。
同じ会社で長く活躍する道も、十分に有力な選択肢です。転職だけが正解ではありません。
転職して環境を変える道
3〜5年目は、転職市場が活発になる時期でもあります。よくある転職・独立の選択肢には、次のようなところがあります。
・Web系の自社開発企業(メルカリのような、自社サービスを作る会社)
・事業会社の社内SE(一般企業の中で、社内のシステムを担う役割)
・ITコンサルティング企業
・フリーランスとして独立(一般的には数年の経験から。案件によっては2〜3年で参画できることも)
3〜5年目の転職市場での評価
元の経歴 | 評価されやすいこと | 評価されにくいこと |
SIerのSE | 要件定義・設計の経験/業界知識/PL・チームリードの経験 | 最新のWeb技術の実装経験/新しい開発の進め方 |
SESのプログラマー | 多様な現場経験/実装の量/適応力 | 上流の経験/業界知識の深さ |
※ これは一般的な傾向です。評価されにくいとされる点も、本人の経験や自己学習で十分に補えます。
転職のリアル
転職では、実務経験やポートフォリオ(自分が作った作品やコードをまとめたもの。個人開発でもよい)、面接の準備などが必要になります。3年ほどの経験が一つの目安ですが、これはあくまで目安です。入社1〜2年の第二新卒の転職市場も活発で、スキルや案件次第で前後します。
年収は、転職先の種類や規模によっては上がることもよくあります。ただし、必ず上がるわけではありません。新しい技術に触れたい、働き方を柔軟にしたいといった、年収以外の理由で転職する人も多くいます。大切なのは、自分が何を求めるかをはっきりさせることです。
\ITエンジニア特化の就活支援サービス/
\ITエンジニア特化の就活支援サービス/
4. 5年目以降|3つのキャリアの道が見えてくる
5年目以降になると、自分の得意なことや、好きな働き方が見えてきます。エンジニアのキャリアの方向は、大きく3つの道に分かれていきます。
キャリア① 技術を極める道
1つ目は、技術を深く極める道です。シニアエンジニアから、技術面のまとめ役(テックリード)、全体の設計を決める専門職(アーキテクト)へと、技術の深さで貢献していきます。自社開発の企業に転職する人も多くいます。
■ 仕事の中身
・システム全体の技術的な判断を担う
・難しい技術の課題に、最前線で取り組む
・後輩エンジニアへの技術的な指導もする
■ 向いている人
・コードを書き続けたい、技術を深く理解したいタイプ
・組織や人の管理より、自分の手で動くものを作りたい人
・一つの領域を深く極めるのが好きな人
キャリア② マネジメント・リーダーに進む道
2つ目は、人とチームをまとめる道です。社内でそのまま昇進し、PMから課長、部長へと進む形が代表的です。転職して、別の会社でエンジニアをまとめる役割(エンジニアリングマネージャー)になる道もあります。コードを書く時間は減り、人と組織に向き合う時間が増えていきます。
■ 仕事の中身
・チームやプロジェクトの進行を管理する
・メンバーを育て、評価する
・クライアントや経営層とやりとりする
■ 向いている人
・人を育てたい、チームで成果を出したいタイプ
・一人より、複数人で動かすほうが好きな人
・全体を見て調整するのが得意な人
キャリア③ ビジネスサイドに進む道
3つ目は、一般企業(事業会社)の中で事業やビジネスのために技術を活かす道です。社内のシステムを担うエンジニアとして転職し、ビジネスに近い場所で働きます。経験を積んで、サービスの企画や方向性を決めるPdM(プロダクトマネージャー)を目指す人もいます。
■ 仕事の中身
・自社の仕事を支えるシステムの企画や運用
・ビジネス側と開発チームの橋渡し
・業界の課題に深く関わる
■ 向いている人
・業界を深く知りたい、ビジネスと技術の両方に関わりたいタイプ
・安定性も大事にしたい人
・業務の知識を積み上げることに価値を感じる人
3つの道の比較
観点 | 道①技術を極める | 道②マネジメント・リーダー | 道③ビジネスサイド |
主な仕事 | 設計・実装の深い領域 | チーム運営・組織づくり | 業務知識と技術の橋渡し |
コードを書く時間 | 多い | 少ない | 中くらい |
求められる力 | 技術の深さ・最新の動向 | 人と組織を動かす力 | 業界知識・ビジネス感覚 |
向いている人 | 一人で深く考えるのが好き | 人と協働して成果を出したい | 業界課題に深く関わりたい |
なお、この3つの道は、はっきり分かれているわけではありません。実際には、プレイングマネージャーのように複数を兼ねたり、スペシャリストからマネジメントへ移ったりと、行き来するのが普通です。
経験年数別の給与の目安(システムエンジニア)
経験年数 | 所定内給与額(月額) |
0年 | 30.28万円 |
1〜4年 | 30.22万円 |
5〜9年 | 35.03万円 |
10〜14年 | 40.09万円 |
15年以上 | 41.29万円 |
※ 出典:システムエンジニア(受託開発)|職業情報提供サイト(job tag)
上の表の月額は、賞与・残業代を含まない「所定内給与額」です。賞与などを加えた実際の年収は、これより大きくなります。
このデータからは、経験を積むほど給与が段階的に上がっていく傾向が読み取れます。最初の数年は横ばいに見えても、5年目以降にしっかり伸びていきます。
年齢で見ると、45〜49歳ごろに年収のピーク(約729万円)を迎えます。システムエンジニア(受託開発)の平均年収は、約578万円です(いずれも同じ調査による目安)。
ただし、これはあくまで全体の目安です。会社や本人のスキル、経験によって幅があります。年収だけでなく、自分の働き方の好みや、やりたいこともあわせて考え、自分らしく働き続けられる道を見つけましょう。
\ITエンジニア特化の就活支援サービス/
\ITエンジニア特化の就活支援サービス/
5. 未経験からのキャリアパス、3つの事例
ここで、未経験スタートからのキャリアを、3つの事例で見てみましょう。どんな道をたどり、何が次の一歩に効いたかを中心に紹介します。
事例1:SIerのSEから、Web系の自社開発企業へ転職
・文系学部の出身で、プログラミング未経験のまま大手SIerに入社
・1〜3年目は、金融系などのプロジェクトで要件定義や設計を経験
・3年目ごろに「もっと新しい技術に触れたい」と思い、休日に個人開発を始める
・4〜5年目に、個人開発の作品と業務経験を武器に、Web系の自社開発企業へ転職
次の一歩に効いたのは、SIerで身につけた要件定義や設計の力でした。加えて、休日に取り組んだ個人開発も評価されました。GitHub(自分の書いたコードを公開・保存できるサービス)に残した記録から、学び続ける姿勢が伝わったようです。
事例2:SESのプログラマーから、専門を定めて自社開発企業へ
・プログラミング未経験でSES企業に入社
・1〜3年目は、Web開発・業務システム・スマホアプリなど複数の現場を経験
・経験を重ねるうちに、得意分野(たとえばサーバーサイドやフロントエンド)が定まる
・4〜5年目に、その専門性を強みに、自社開発の企業へ転職
次の一歩に効いたのは、複数の現場で積んだ実装の量と、特定領域に絞って深めた専門性でした。技術ブログや勉強会での発表で、学びを発信していた実績も後押しになりました。
事例3:未経験で入った会社に腰を据え、数年でリーダー・専門職へ
・非情報系の学部から、プログラミング未経験で開発会社(SIer)に入社
・入社後の研修で基礎を学び、1〜2年目はインフラやアプリなど複数の領域を経験
・分からないことは先輩や顧客に臆せず質問し、自分から動いて吸収していった
・2〜3年目に上流工程(要件定義)や規模の大きい案件を任され、得意分野が定まる
・4〜5年目に、リーダーやPM、または技術スペシャリストに抜擢される
同じ会社に腰を据えたことで、一つのシステムに長く深く関わる経験ができました。次の一歩に効いたのは、特別な才能よりも、自ら質問して動く姿勢と、上流で「何が正しいかを考える」経験です。転職しなくても、社内で着実に活躍の場を広げられることを示す道です。
▼事例3をさらに詳しく知りたい方へ!SIerのSEインタビュー記事
プログラミング未経験から4年でPMに抜擢。クライアントからの学びを成長の糧に変える、SEの挑戦
3つの事例は、あくまで一例です。「同じ道をたどれば成功する」ではなく、「未経験からでも、こんな道筋がある」とイメージしてください。
\ITエンジニア特化の就活支援サービス/
\ITエンジニア特化の就活支援サービス/
6. 今、未経験のあなたが意識すべき3つのこと
ここまでを踏まえて、未経験の学生が意識しておきたいことを、3つに絞ってお伝えします。
1. 最初の会社選びよりも、入社後の動き方が大事
最初にどの会社へ入るかよりも、入った後にどう動くかが、その後を大きく左右します。1〜3年目は土台を作る時期です。楽な仕事ばかり選ばず、難しい案件や上流の経験、新しい技術への挑戦を意識してみましょう。「SIerだから安心」「SESだから不利」と業態だけで決めつけず、3年後、5年後に自分は何ができるようになるかに集中するのがおすすめです。
2. 「どの道を歩みたいか」は3年目までに考え始めれば十分
入社の時点で、「自分は技術スペシャリストになる」と決めておく必要はありません。1〜3年目の経験を通して、自分の得意なことや好きなことが見えてきます。3年目あたりで、3つの道のうちどれが自分に近いかを考え始めれば十分です。
3. 社外での学びや発信も、次の選択肢を広げる
会社の仕事に加えて、社外での学びや発信も、将来の選択肢を広げてくれます。たとえば、休日の個人開発や、勉強会での発表、学んだことのブログでの発信などです。こうした積み重ねは、転職のときに「学び続ける姿勢」として評価されやすく、社内で新しい挑戦を任されるきっかけにもなります。無理のない範囲で、少しずつ始めてみるとよいでしょう。
\ITエンジニア特化の就活支援サービス/
\ITエンジニア特化の就活支援サービス/
7. まとめ
このシリーズでは、IT業界の全体像(#1)から始まり、SIerとSESの違い(#2)、ビジネスモデルの違い(#3)を見てきました。さらに、未経験新卒のメインルート(#4)やエンジニアの3つの世界(#5)、職種ごとの一日(#6)にも触れています。そして今回は、未経験スタートからのキャリアをたどりました。
お伝えしたいのは、未経験から始めても、3〜5年でできることは大きく広がるということです。そして、「いまどの会社に入るか」よりも、「入った後にどう動くか」が、その先を決めます。何年目からでも、軌道修正はできます。
このシリーズで得た知識をもとに、自分なりの軸を持って、サマーインターンや本選考に臨んでみてください。あなたのキャリアが、自分らしく続けられるものになるよう、応援しています。
関連記事









