「BtoB/BtoC/BtoBtoC」あなたが携わりたいのはどんなサービス?

「BtoB/BtoC/BtoBtoC」あなたが携わりたいのはどんなサービス?
「IT企業」と聞くと、メルカリやLINE、Spotifyなど、ふだんスマホで使うサービスを思い浮かべる人が多いはずです。これらはすべて、個人向けのサービス(BtoC)にあたります。

ただ、日本のIT業界で大きな存在感を持つのは、実は企業向けのサービス(BtoB)を作る会社です。会計や名刺管理、社内の情報共有など、仕事を助けるサービスを提供する企業は、売上や従業員数で個人向け(BtoC)の会社を上回ることも珍しくありません。

企業向けのビジネス(BtoB)を理解できれば、企業選びの視野が広がり、企業理解を深める手がかりにもなります。

この記事では、IT企業のサービスを「誰が使い、誰がお金を払うか」で3つに分けます。そのうえで、それぞれのビジネスのかたちが、なぜその開発スタイルや社風につながるのかを解説します。
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1. サービスを分ける軸は「使う人とお金を払う人の関係」

IT企業のサービスを整理する最もシンプルな軸は、「誰がそのサービスを使うか」と「誰がお金を払うか」の関係です。


世の中のサービスは、この2者の関係で3つのパターンに分けられます。使う人とお金を払う人が同じか、それとも別かで変わってきます。

ビジネスモデルのマップ


この3つのパターンを、順番に見ていきましょう。それぞれ「どんなビジネスのかたちか」「どんな開発になるか」「どんな社風になるか」が違ってきます。

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2. BtoC|企業が個人に提供する

BtoC(ビー・トゥー・シー)は、企業が個人に向けて提供するサービスです。Business to Consumerの略で、コンシューマーは「消費者(個人)」という意味です。サービスを使う人と、お金を払う人が、同じ個人になります。
 

BtoCのビジネスモデル図

BtoCのビジネスモデル

個人が、自分の意思で、自分のお財布からお金を払うのがBtoCです。代表的な収益のあげ方は、次の3つです。
 

  • ・月額課金型:SpotifyやNetflixのように、毎月決まった料金を払い続けてもらう

  • ・都度課金型:メルカリの手数料やAmazonの買い物のように、取引のたびにお金が動く

  • ・広告型:XやInstagramのように、無料で使ってもらい、広告で収入を得る


どれも共通するのは、ユーザーが「使い続けるかどうか」を毎日のように選んでいることです。他のサービスに乗り換えるのは、ボタンひとつで手軽にできてしまいます。そのため、いかに「使い続けてもらうか」が重要になるのです。

利益を上げるために必要なこと

BtoCの売上は、「ユーザー数 × 利用の頻度 × 1人あたりの売上」で決まります。そのため、利益を上げるには、次のことが必要になります。
 

  • ・新しいユーザーを集め続けること

  • ・使いにくさで離れられないよう、画面の使いやすさ(UI・UX)を磨くこと

  • ・何度も使ってもらえる工夫(通知やおすすめ機能など)を入れること

  • ・数字(データ)を見ながら、改善を重ねること


中でも、画面の使いやすさを磨くことと、数字を見て改善することが、開発の現場で日々求められます。

開発環境・社風

使いやすさと数字を見ながらの改善が大切になるため、BtoC企業の開発現場には、次のような特徴があります。
 

  • ・2つのデザインを試して反応を比べる「A/Bテスト」が、日常的に行われる

  • ・新しい機能を出す頻度が高く、週に1回以上出す会社もある

  • ・数字を分析するチームの存在感が大きい

  • ・画面を企画するマーケティング職やデザインする担当者と、エンジニアの距離が近い

  • ・流行に敏感な人が集まりやすい


流行り廃りの激しい個人向けのサービスでは、収益を上げるため、企業も変化が早い傾向にあります。

こんな人が向いている

  • ・新しいものや、流行に敏感な人

  • ・家族や友人など、身近な人を喜ばせるのが好きな人

  • ・スピード感のある環境で、試しながら改善するのが好きな人

  • ・「使う人がどう感じるか」を考えるのが楽しい人

  • ・反応がすぐ返ってくる仕事にやりがいを感じる人


代表的なサービスには、メルカリやLINE、Spotify、Netflix、X、Instagram、Uber Eats(利用者側)などがあります。

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3. BtoB|企業が企業に提供する

BtoB(ビー・トゥー・ビー)は、企業が企業に向けて提供するサービスです。Business to Businessの略です。サービスを使う人(社員)と、お金を払う人(その会社)は違いますが、どちらも同じ会社の中にいます。


BtoBには、大きく2つの関わり方があります。1つは、自分たちで作ったサービスを多くの企業に使ってもらう「自社サービス型」です。freee(会計)やSalesforce(顧客管理)などが当てはまります。もう1つは、他社のシステム開発に関わるタイプで、前回 #2 で取り上げたSIerやSESがここにあたります。


同じ「他社のシステム開発に関わる」といっても、SIerとSESは中身が違います。SIerは、企業から頼まれてシステムを作る「受託」が中心です。SESは、自社のエンジニアをお客さん先に常駐させ、その会社のプロジェクトで開発に加わる形で、エンジニアの働き(時間)を提供します。


どちらも、お金を払うのは企業です。そのため、すべてBtoBに含まれます。ここからは、それぞれの共通点と違いを見ていきましょう。
 

BtoBのビジネスモデル図

BtoBのビジネスモデル

BtoBは、企業が仕事の効率化や課題解決のためにお金を払う点は同じですが、収益の上げ方はタイプによって変わります。IT業界について、下の表で整理しました。

タイプ 収益のあげ方
自社サービス型 ・月額や年額で払い続けてもらう形(サブスクリプション型)
・ソフトを買い切ってもらう形、または1年単位で契約する形
・使った分だけ支払ってもらう形(従量課金型)
・freee(会計)、Salesforce(顧客管理)、kintone(社内の業務アプリ)
・Office 2024(Microsoft Officeの買い切り版)、勘定奉行(会計ソフト)
・AWS(クラウド基盤)
SIer(受託開発) 頼まれたシステム開発のプロジェクト1件ごとに対価をもらう NTTデータ、富士通など
SES(客先常駐) 自社のエンジニアが客先で働いた時間(人月)に対して対価をもらう システナ、アルプス技研など

BtoBの大きな特徴は、契約が長く続くことです。一度導入されると3〜5年は使われることが多く、特にサブスクリプション型は安定した売上が見込めます。SIerやSESは、プロジェクトや契約が続く限り対価を受け取る形です。

利益を上げるために必要なこと

タイプは違っても、BtoBで利益を上げるために大切なことは共通しています。それは、お金を払う企業から、長く信頼してもらうことです。次のような点が必要になります。
 

  • ・使う会社の仕事の流れを、深く理解すること

  • ・会計や人事など、ミスが許されない業務を正確に扱うこと

  • ・長く使われても問題が出ない、しっかりした設計にすること

  • ・自社サービス型なら解約されないこと、SIerやSESなら「次もまた頼みたい」と思われること


中でも、業務を正確に理解することと、堅実に取り組むことが、BtoBの仕事で共通して求められます。

開発環境・社風

正確さと堅実さが大切になるため、BtoB企業の開発現場には、次のような特徴があります。これは自社サービス型でも、SIer・SESでも、おおむね共通します。
 

  • ・どんなシステムが必要かを整理する作業(要件定義)に、時間をかける

  • ・品質チェックやテスト、コードの確認を大切にする文化がある

  • ・会計や人事などのデータは、正確さがとても重要になる

  • ・会計や労務など、会社運営の知識について学ぶ姿勢が求められる


進め方には、タイプによる違いもあります。自社サービス型は、1つのサービスを月単位から数ヶ月のペースで改善し続けるのが基本です。SIerはプロジェクト単位でシステムを作り、SESはエンジニアがお客さん先に常駐して、その会社の開発に加わります。


「表には出ないが、長く使われるシステムを作る」のが、BtoB企業の特徴です。

こんな人が向いている

  • ・誰かの困りごとをじっくり聞いて、解決するのが好きな人

  • ・目立たなくても、誰かの役に立っている実感を大事にする人

  • ・腰を据えて、長くひとつのものに取り組みたい人

  • ・正確さや丁寧さに自信がある人

  • ・裏方として社会を支える仕事に、魅力を感じる人


代表的な企業を見てみましょう。自社サービス型には、freee(会計)やマネーフォワード、Sansan(名刺管理)、サイボウズのkintone(社内の業務アプリ)などがあります。他社のシステム開発に関わるタイプには、NTTデータや富士通などのSIer、そして数多くのSES企業があります。

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4. BtoBtoC|企業向けに作るが、最後は個人に届く

BtoBtoC(ビー・トゥー・ビー・トゥー・シー)は、企業に提供するサービスでありながら、最後にそれを使うのは個人、という形です。お店や事業者に仕組みを提供し、その先にいる個人のお客さんが使用します。
 

BtoBtoCのビジネスモデル図

BtoBtoCのビジネスモデル

サービスを作る会社は、お店や事業者(企業)に「土台となる仕組み」を提供します。お店はその仕組みを使って、自分のお客さん(個人)にサービスを届けます。代表的な収益のあげ方は、次のとおりです。
 

  • ・取引のたびに手数料をもらう形。Uber EatsやShopify(ネットショップ開設)など

  • ・お店から月額の料金をもらう形。BASE(ネットショップ開設)など

  • ・月額の料金と手数料を組み合わせる形


BtoBtoCの大きな特徴は、利用が掛け算で増えることです。1社のお店が10万人のお客さんを抱えていれば、1社の契約でも、その分だけ個人の利用者が一気に増えます。

利益を上げるために必要なこと

BtoBtoCの売上は、「お店の数 × お店ごとのお客さんの数 × 取引額」で決まります。利益を上げるには、次のことが必要です。
 

  • ・お店が使いやすい管理画面や、導入のしやすさで、使ってもらうお店を増やすこと

  • ・お店の先にいる個人にも、使いやすい画面を用意すること

  • ・利用者が一気に増えても、安定して動かせるようにすること

  • ・お店側と個人側、両方の使いやすさを同時に満たすこと


中でも、お店と個人の両方を意識した設計と、利用者が増えても安定させる工夫が、開発の現場で日々求められます。

開発環境・社風

両方への配慮と安定性が大切になるため、BtoBtoC企業の開発現場には、次のような特徴があります。
 

  • ・お店向けの管理画面と、個人向けの画面、両方を作る

  • ・利用者が増えても止まらないよう、性能や安定性への投資が大きい

  • ・システムを他のシステムと接続させる仕組み(API)の質が、お店や個人の満足度に直結する

  • ・お店の都合と、個人の使い心地、両方を考える社風

  • ・「自分たちが土台を提供し、その上で他社が価値を生む」という考え方


「BtoBとBtoCの両方の難しさを抱える」のが、BtoBtoC企業の特徴です。多くの人が使う土台を支えることを、やりがいにする人が多くいます。

こんな人が向いている

  • ・「場」や「仕組み」を作って、多くの人に活用してもらえると嬉しい人

  • ・お店や事業者の挑戦を、後押しする仕事にやりがいを感じる人

  • ・複数の異なる立場にある人について、全員を満足させる方法を考えるのが得意な人

  • ・裏側で社会を動かす、大きな仕組みを作りたい人


代表的なサービスには、Stripe(ネット決済の仕組み)やShopify、BASE、Uber Eats(お店側)、メルカリ Shopsなどがあります。

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5. 3つのタイプで「開発スタイル」はどう違う?

3つのタイプの違いは、ビジネスのかたちだけでなく、毎日の開発スタイルにも大きく表れます。下の表で比べてみましょう。

観点 BtoC BtoB BtoBtoC
改善のスピード 週単位 月単位〜数ヶ月になることも 機能による(管理画面はBtoB寄り、個人向けはBtoC寄り)
使いやすさの優先度 最優先 業務や状況次第 両方とも求められる
要件の重さ 軽め(試しながら進める) 重い(設計をしっかり固める) 両方が混ざる
求められる考え方 使いやすさ・データ重視 業務理解・設計重視 両方+土台を支える視点

開発スタイルの違いは、自分が毎日どんな働き方をしたいかにも関わります。次のように考えてみると、向いているタイプが見えてきます。
 

  • ・画面を少しずつ変えながら、利用者の反応を見たいなら、BtoC

  • ・使う会社の仕事を理解して、長く使われるものを作りたいなら、BtoB

  • ・多くの人が使う土台を支えたいなら、BtoBtoC


なお、ここで紹介する社風や向いている人は、あくまで傾向です。同じタイプでも、会社や事業の成長段階によって大きく変わります。たとえば、BtoBの自社サービス型(SaaS)でも、BtoCのように速いペースで開発する会社もあります。

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6. 「身近なサービスはどの型?」を考えてみよう

3つのタイプの違いに慣れるために、身近なサービスを分けてみましょう。下の図で、どのタイプに入るかを見てみてください。
 

身近なITサービスのビジネスモデルの分類

ここで、意外な発見があるかもしれません。たとえば、次のような例です。
 

  • ・LINE:個人向けはBtoC、企業向けのLINE WORKSやLINE公式アカウントはBtoB

  • ・Uber Eats:利用者から見るとBtoC、お店から見るとBtoB、全体ではBtoBtoC

  • ・メルカリ:メルカリの個人向けはBtoC、出店するお店向けはBtoBtoC


このように、1社が複数のタイプを持つことも珍しくありません。気になる企業を調べるとき、その企業がどのタイプでビジネスをしているかを意識すると、面接での質問の質も上がります。

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7. あなたが作りたいのはどんなサービス? 診断3問

3つのタイプのうち、自分はどこに興味があるかを整理してみましょう。
 

質問1:誰の役に立っている実感がほしい?

誰の役に立ちたいか 近いタイプ
自分の家族や友人に使ってほしい BtoC
会社で働く人の仕事を助けたい BtoB
お店や事業者の成功を支えたい BtoBtoC

質問2:どんな働き方が好き?

好きな働き方 近いタイプ
スピード感をもって改善を重ねたい BtoC
腰を据えて、長く運用を考えたい BtoB
複数の立場を意識した仕組み作りが好き BtoBtoC

質問3:身につけたいのはどんな力?

身につけたい力 近いタイプ
反応を見て、すばやく改善する力 BtoC
業務を深く理解して、長く使われるものを作る力 BtoB
複数の立場を捉えて、大きく広げる力 BtoBtoC

3問ではっきり決める必要はありません。「自分はどこに近いか」のあたりがついていれば、これからの企業選びで役立ちます。


また、上記の分け方はあくまで傾向であるため、同じビジネスモデルの会社・事業フェーズでも大きく異なることがあります。


そのため、ビジネスモデルだけにとらわれず、気になる企業が見つかったら、その会社の主力事業がどのタイプかを採用ページや事業紹介で確認してみましょう。

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8. まとめ

IT企業のサービスは、「使う人とお金を払う人が同じか」という見方で、BtoC・BtoB・BtoBtoCの3つに分けられます。ビジネスのかたちが違うと、収益のあげ方が変わり、それに合わせて開発スタイルや社風も変わるのが特徴です。就活ではつい個人向けの有名なサービスに目がいきがちですが、企業向けのBtoBやBtoBtoCも視野に入れると、企業選びの選択肢を広げるきっかけになります。自分のタイプに合ったサービスが見えてくると、企業選びの軸がひとつ増えるはずです。気になる会社が見つかったら、そのサービスがどのタイプかをのぞいてみましょう。