サイバー攻撃の急増に着目し網屋のセキュリティエンジニアへ。就活に出遅れても部活を武器に内定獲得

サイバー攻撃の急増に着目し網屋のセキュリティエンジニアへ。就活に出遅れても部活を武器に内定獲得
就活のスタートが遅れてしまった。プログラミングの実務経験も多くない。そんな状況で、「自社開発企業のエンジニアとして内定を獲得できるのか」と焦りを抱えている就活生もいるのではないでしょうか。

今回お話を伺ったのは、大学院で半導体を研究している先輩です。修士2年の5月中旬という遅めの時期に就活を始めました。就活中に他社の面接官から「日本へのサイバー攻撃が急増している」と聞いたことをきっかけに、需要が伸び続けるセキュリティの分野に着目。自社でソフトを開発する株式会社網屋から、セキュリティエンジニアとして内定を獲得しました。

面接で技術の深掘りはほとんどなく、語ったのは競技ダンス部での経験です。学部2年生から始めて同期に追いつき、全国大会に出場するまでの過程や、パートナーと動画を見ながら、体の角度やタイミングといった客観的な事実だけで技を改善した話が、評価につながったといいます。

遅めに就活をスタートし、限られた実務経験の中でも内定を掴めた理由を、詳しく伺いました。
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【プロフィール】

  • 卒業年度:2027年卒

  • 大学・専攻:理系大学院 情報系専攻(修士課程)

  • 内定先:株式会社網屋

  • その他の内定先:株式会社デジタルフォルン

  • 職種:セキュリティエンジニア

  • 配属部署:セキュリティ部門想定

  • 初任給・オファー年収:400万円

1. 就活前〜就活開始時に取り組んだこと

Q. 就職予定の企業の職種と事業領域は?

配属想定はセキュリティ部門です。就職先の網屋は、自社でセキュリティソフトを開発している企業です。ただ、製品を導入するだけでは対応しきれない高度な課題や、お客さまごとの個別ニーズもあります。そうした課題に応えるのが、僕の配属予定の部署になります。


網屋を選んだ1番の決め手は、「自社プロダクトを持っている」という点です。元々は、就活中に他社の面接官から「日本へのサイバー攻撃が急増している」と聞いたことがきっかけで、セキュリティ分野に着目しました。需要が伸び続けているセキュリティ分野において、「外部の影響を受けにくい自社製品」という強みが、網屋にはあります。自社ソフトの開発を通じて、技術と対人スキルの両方を伸ばしていける環境だと感じ、入社を決めました。

Q. 就活前に開発関係で取り組んだものは?

大学4年の冬、先輩の紹介である会社で長期インターンをやらせてもらいました。内容は、Pythonを使った機械学習で、工作機械の画像認識システムまわりの開発です。


3ヶ月の間、完全フルリモートの環境で、1週間ごとに課題が出されました。その中で「自分の進んでいる方向が正しいのか分からない」という不安がずっとあったんです。手探りでコードを書いては、担当者に確認するか、諦めて出すかの2択みたいな状態で……(笑)。完全オンラインの働き方は自分には向いていないんだな、と感じたことは就職先を決めるうえでも役に立ちました。

Q. 就活をスタートした時点での開発スキルと習得言語は?

学部時代の授業で、Pythonを1年ほど学びました。C言語やJavaScriptもそれぞれ1年くらい触った程度です。大学院では、同じ情報系でも半導体を研究していたためプログラミングを一切使っていませんでした。そのため、コードを書いた経験があるのはPythonだけでした。


スキルのレベルで言うと、初級のちょっと上か中級未満といったところでしょうか。「こういう手順でこれ作って」と言われれば、教科書や手順書を見ながらなんとか作れるくらいの基礎レベルでした。

Q. 就活のスタート時期と具体的にやったことは?

動き出したのは修士2年の5月中旬です。この時期になった大きな理由は、とにかく部活が忙しすぎたからです(笑)。大学生活を部活に全部捧げていたので、そこから解放されてぼーっとしていたら、気づけば5月になっていた感じですね。そんなとき、「就職しないだろう」と思っていた友達が、内定をもらったと聞きました。「これはさすがにまずいぞ」と焦って、一気にスタートしました。


具体的にやったこととしては、まずレバテックルーキーのイベントに参加し、エージェントの方に相談したことです。「時期的に選考をやっている企業がかなり少ない」と言われながらも、紹介してもらった企業へ次々とエントリーしていきました。


同時に、先輩に教わった「自分史」の作成で自己分析を進めました。幼稚園から高校、大学までの出来事をそれぞれ500字程度でバーッと書き出して、そのときどきの感情もリストアップしていったんです。「自分はこういうことがしたくて、これが得意で、これが苦手なんだ」と、自分の価値観に落とし込めたことで、選考に向けた軸がしっかりと固まりました。

Q. 志望企業を絞り込むうえで重視した「軸」は?

ひとつは「自分が成長できる環境があるか」です。セキュリティ分野は信頼性が命なので、バグやずさんなコードが一切許されません。そうした妥協のない環境で経験を積むことで、確かな技術力が身につくはずです。それに、コードにめちゃめちゃ詳しいプロの先輩方がたくさんいる環境なら、自分1人でやるより確実に成長できると考えました。こう考えたのは、長期インターンで「リモートが向いていない」と感じたことも、背景にあるのかもしれません。


もうひとつは「自分の専門分野(強み)を2つ持てるか」という点です。世界がどう変化するか分からない中で強みが1つだと不安なので、2つ持ちたかったんです。僕の場合は、「エンジニアとしての技術・専門知識」を深めつつ、2つ目の強みも育てていけるかを重視していました。それが、お客さまや他社と関わる中で身につく「コミュニケーション能力やビジネスパーソンとしてのスキル」です。面接でも、網屋では「セキュリティ技術×対人交渉スキル」、他社では「営業スキル×技術知識」といった形で、2本軸を持つスペシャリストを目指したいと伝えていました。


この「人と関わりたい」という原体験は、まさに競技ダンス部にあります。2人1組で毎日4時間踊りの練習をするなかで、「自分が頑張った分が2人の結果につながり、相手のためにもなっている」という実感がありました。僕にとっては、それが何よりの喜びだったんです。だからこそ、「将来も人と深く関わり、相手に貢献できる仕事がしたい」という思いが固まりました。

Q. 企業選びでAIを使った開発環境は確認した?

当時の就活では、AIの活用状況などは確認していませんでした。長期インターンの際にも、コード作成などでAIを使う習慣がなかったからだと思います。

2.株式会社網屋の選考詳細

Q 選考フローと問われた内容、答えたこと は?

選考フローは、1対1のオンライン説明会から始まり、ES提出、Webテスト(CAB)、2次面接、最終面接という流れでした。コーディングテストや技術主体の選考はありません。


2次面接はセキュリティや自社ソフト管理など、網屋の4つの部門の担当者と4対1で行われました。技術力について深掘りされることはなく、「競技ダンス部でどのような役割を果たし、どう成果を出してきたか」といった部活動の取り組みや人間性を掘り下げる質問が中心でした。


私が評価されたと思う一番のポイントは、部活での「技の改善」に関する具体的エピソードです。


部活で「技の改善」についてパートナーと話し合うとき、主観や感情論で「ここが変だ」と伝えてしまうと、反論されて対立が生まれます。話し合いも平行線になってしまうでしょう。無用な衝突を防ぐために、動画を一緒に見て、体の角度やタイミングといった客観的な事実だけ伝えることを徹底していました。面接官には、感情に流されず、客観的な事実に基づいて対話できる点を評価いただいたと感じています。


一方で、技術面について「プログラミングは、あまりできないかもしれないです」と正直に伝えました。その際は、「入社後に勉強する期間があるから大丈夫」と受け止めていただいたことが印象に残っています。素直に受け答えができる姿勢も、見てもらえていたように思いました。

Q. 面接でAIの利用はどう聞かれてどう答えた?

面接の中で、1回だけ「今使っているAIは何ですか?」と質問されました。そのときは「Claude Codeを使っています」とシンプルに答えています。AIの話はそれで終わり、深い話に発展することはありませんでした。

Q. 選考で見られていると感じたことは?

やはり、部活動など通した「物事に向き合う姿勢」ではないでしょうか。具体的には、現状の課題を冷静に捉えて目標を設定し、そのために自ら行動を起こせるか、という「課題解決力」を見られていると感じました。


僕の場合、2年生から部活を始めたため、同期との差が最初の課題でした。そこで、圧倒的な練習量を確保し、全国大会出場という成果につなげました。「部活で成果を出したこと」そのものよりも、「遅れやハンデがある状態から、どう考えて行動に移したか」のプロセスを評価されたように感じます。

Q. 選考で「難しい」と感じたことは?

面接官から想定外の質問が来たときです。志望動機を語るときに、「御社は、安定して成長している企業という印象があります」と話したところ、「安定して成長している企業って、どういう企業だと思いますか?」と質問が返ってきました。企業分析の用語できれいに答えようとすると言葉が詰まりそうだったので、変に背伸びせず、「事業に投資できるだけの余剰資金が常にある会社です」と答えました。結果的に、飾らないロジックが納得してもらえたようでした。


また、選考を通して感じたのは「面接官との相性」の重要性です。リアクションが大きい面接官だと話の響き具合がわかりやすいのですが、反応が薄い相手だと「的外れなのかな」と不安になり、話の着地点をどうすべきか判断が難しかったです。


ただ、相手の顔色を伺って自分を偽った回答をしても、入社したあとに苦しくなるだけです。だから途中で開き直って、「合わない面接官やリアクションがない企業は、そもそも自分に合っていないんだ」と割り切るようにしました。飾らない、ありのままの自分を受け入れてくれる企業を見極める方針を貫きました。


ちなみに、もう1社内定をいただいたデジタルフォルンさんは、1回目の面接がすごくフレンドリーでした。部活の話や「就活のスタートが遅れた理由」を素直に答えていたら、1時間ほどの面接で即日内定をいただきました。

Q. 内定者に共通する「必要最低限のスキルライン」は?

入社前の段階で高度なプログラミング技術は求められていないと感じます。最低限のIT知識や、「何も分からないわけではない」ことが伝わる基本理解さえあれば問題ないのではないでしょうか。


網屋では、内定後には教材を提示されて、事前学習を進めます。「渡されたものを使って自分で主体的に勉強していける」自走力こそが、求められるラインだと思います。

3. 就活を振り返って「やるべきだ」と思うこと

Q. 就活で「やっておいてよかったこと」は?

1つは、「部活動に全力投球したこと」です。本気で打ち込んだ経験そのものが面接で語れる最高の素材になり、自分の言葉に自然と説得力を持たせられました。


もう1つは、部活の先輩に勧められて作成した「自分史」です。幼稚園から大学までの出来事と、「そのときどう感じたか」という感情の動きを整理しました。そのおかげで、面接で突拍子もない質問をされても、根っこの価値観と繋げて打ち返せるようになりました。

Q. 就活で「やっておけばよかったこと」は?

一番の反省点は、学部3年時の成功体験で油断してしまったことです。当時、試しに受けた倍率の高いサマーインターンに何社か合格しました。それで「面接で苦労することはなさそうだな」「本選考も直前にやれば受かるだろう」と甘く考え、就活を中断してしまったんです。


ところが、いざ大学院生として本選考に臨むと、企業側の評価基準がガラリと変わっていました。学部生の頃は、ポテンシャルや熱意が重視されていたと思うのですが、大学院生になると、それだけではなく「研究や専攻を経て、論理的思考力が身についているか」が厳しく見られるようになったと感じます。「自分は面接が得意だから大丈夫」と高をくくらず、第三者から面接対策を受けていれば、と思いました。自分の考えだけで進めるのではなく、早くから客観的なフィードバックをもらえていれば、もっとスムーズに進められたはずです。

Q. 就活で「やらなくてもよかったこと」は?

説明会や面接での、過度なメモとりです。当時は真面目にノートを取っていましたが、結局あとで見返すことはほとんどありませんでした(笑)。


誤解のないように言うと、メモをとること自体が無駄というわけではありません。ただ、説明会や面接の目的は「メモを完璧にとること」ではなく、企業が一番アピールしたい魅力を知り、自分との相性をつかむことです。メモをとることだけに集中してしまうと、企業とのフィーリングを見定めたり、直感的な違和感に気づいたりする余裕がなくなってしまいます。


説明会や面接では、記録にとらわれすぎず、その場で感じたことを大切にするほうがよいと感じました。

Q. 同様の状況にある後輩が自社開発を目指すなら、まず何をやるべき?

業界研究や企業の比較に時間をかけて止まってしまうくらいなら、まずは自己分析を進めるべきです。自分にとって何がモチベーションになるのか、将来どんな方向を目指したいのか。そうしたことを掘り下げれば、自然と働きたい企業が見えてくるのではないでしょうか。


そして、自分自身を掘り下げたら、次は「徹底的な面接対策」が大切です。どういう受け答えをすれば、相手にどんな印象を持たれるのか。「面接での見られ方」の感覚を掴むことが、内定への近道だと思います。


ただ、この感覚は、鏡に向かって練習していてもつかめません。自分一人では限界があります。だからこそ、エージェントや第三者など、ダメな部分を客観的かつ具体的に指摘してくれる相手を見つけてください。そして、早い段階から場数を踏んでおくことを、強くおすすめします。

4. エンジニアの就活やキャリアの今後について

Q. 採用人数の減少や初任給の上昇など、AIがエンジニアの就活市場に与えている影響の実感は?

企業側が、生成AIで作られたエントリーシートに不信感を強めていることを感じました。その対策なのか、最初に就活をした学部生の頃と比べて文章だけの選考を減らし、本人の生の人柄や喋りを確認できる「録画面接」を導入する企業が増えた印象です。AIに文章を作らせると、誰が書いても同じようなきれいな構成や、似たり寄ったりの表現になってしまうからでしょうか。


僕自身は、就活の書類作成であえて文章生成AIに頼らず、時間をかけて自分の言葉で書いていました。周りの学生がAIで均一化された文章を提出する中で、自分の言葉で思考プロセスや感情を表現した文章は、結果として差別化され、企業に強い印象を与えられたのではないかと感じています。

Q. AI時代のエンジニアキャリアに不安はある?今後の見通しは?

キャリアに対する不安は一切ありません。AIの進化で型通りのコードを書くような仕事がなくなったとしても、僕が「AIを開発する側」か「AIを使いこなして価値を生み出す側」に回れば良いだけだと捉えているからです。


AIによって単純作業が淘汰される一方で、人間の思考を要する複雑で高度な設計や開発の仕事は、残り続けると思います。市場のレベルが上がるなら、自分もそこに追いつく高い技術力を磨き続ければ良いだけです。高度なスキルを身につければ、報酬や年収も自ずと跳ね上がります。「AI時代でも第一線で通用している」という、技術面での自信にも繋がるでしょう。僕にとってのAIは、「自分の技術がどれだけ高まったかを測るバロメーター」 だと、ポジティブに捉えています。

Q. 今後、エンジニアとしてどのようなキャリアを築いていきたい?

まずは入社予定の網屋で、技術的土台を徹底的に固めたいですね。セキュリティ分野における高度な専門知識と、システムの脆弱性を見つけ出して対策する技術を、叩き込みたいです。


また網屋は、エンジニアであってもお客さまと直接対話や交渉を行う機会が豊富な環境です。だからこそ、現場でのやり取りを通じて、ビジネスパーソンとしての対人交渉力や提案力も磨いていきたいと考えています。「尖ったセキュリティの技術力」と「現場のお客さまから確固たる信頼を得られる対人スキル」。この2つを兼ね備えた、ハイブリッドなエンジニアを目指して成長していきたいです。

5.事例から学ぶ!就活のポイント(編集部コメント)

今回の事例から、2つのことをお伝えします。


1つ目は、学部のうちから就活を一度経験しておくことの価値です。理系の院生には、学部時代に就活を経験する人が少なくありません。スケジュールの流れや面接の雰囲気を早くつかめるので、学部時代に就活をすること自体はおすすめです。ただし、油断は禁物です。今回の先輩も、学部時代の成功体験から「本選考も何とかなる」と考え、一度就活を中断してしまいました。サマーインターンと本選考でも評価の軸が変わるため、インターンから本選考まで一通り見ておくと安心です。


2つ目は、将来の考え方を実体験から組み立てることの大切さです。先輩は、セキュリティに関心を持ち、「専門性を2つ掛け合わせたい」という軸を掲げていました。一見ユニークな発想ですが、「サイバー攻撃の急増」や「競技ダンスで培ったコミュニケーション能力」など、自分の興味や体験に根ざしています。


日々の生活で興味を持ったことや、本気で打ち込んできたことから将来を考えてみると、納得感のあるキャリア選択につながるでしょう。

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