ユーザー系SIerのメリットとは?種類ごとの違いや就活対策も詳しく解説

ユーザー系SIerのメリットとは?種類ごとの違いや就活対策も詳しく解説
将来性のあるIT業界で働くことを希望する学生が増加傾向にあるなかで、SIerに関心がある方も多いでしょう。SIer企業はその成り立ちや事業内容により5つの種類が存在します。 この記事では、SIer企業のなかでも特にユーザー系SIerにフォーカス。基礎知識やメリット・デメリットのほか、ユーザー系SIerで働くために学生のうちにやるべきことについても解説します。

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1. SIerとは

SIer(エスアイヤー)とは、顧客の課題解決のためのシステムのコンサルティングや設計、開発、運用・保守などを請け負う企業のことです。請け負う工程は、企業により異なります。SIerはSystem Integrator(システムインテグレーター)の略称で、ほかに「SI」や「ITベンダー」、「システムベンダー」などと呼ばれることもありますが、「SIer」という呼び方が一般的です。SIerは、企業の成り立ちや事業内容によって、ユーザー系・メーカー系・独立系・コンサル系・外資系などの種類に分類されます。

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2. ユーザー系SIerとは

ユーザー系SIerとは、一般企業の情報システム部門が子会社として独立した企業を指します。情報システム部門とは、各企業のIT戦略の立案、基幹システムやITインフラの構築・運用・保守、また社内ユーザー向けのサポートを行う部門のことです。親会社が所属する業界により、商社系や金融系などさまざまな企業が存在する点が特徴といえるでしょう。

ユーザー系SIer企業が請け負うのは、基本的に親企業やグループ会社向けのシステム開発で、主に管理側の仕事を行います。また、企業によっては一般企業向けの開発を行うこともあります。

ユーザー系以外のSIer

ユーザー系SIerを理解するためには、その他の種類のSIerについて知ることも大切です。以下で、ユーザー系以外の各種類のSIerについて確認しておきましょう。

メーカー系

メーカー系SIerとは、コンピュータや家電などのハードウェアメーカーの情報システム部門が子会社として独立した企業のことです。上述したユーザー系と異なり、業界がメーカーに限定されているという特徴があります。主に親会社のハードウェアと組み合わせたソリューションの提案やシステム開発を行い、ユーザーの課題に対し、ハードウェアからソフトウェアまでトータルで対応できる点が特徴です。

独立系

独立系SIerとは、親会社を持たず、独自の経営をしている企業のことを指します。ユーザー系・メーカー系と異なり、親会社からの影響を受けずに自由な経営・開発を行うことができる点が特徴です。複数の業界をまたいで仕事をする企業も多くあります。

コンサル系

コンサル系SIerとは、クライアントの経営・業務状況を把握し、経営戦略に合わせてシステム構築を提案する企業のことです。たとえば、クライアントが予算不足に悩まされている場合、コスト削減に貢献できるシステム・IT技術の導入を提案します。また、コンサルティングだけでなく、提案したシステムの開発まで行う企業もあるようです。

外資系

外資系SIerとは、海外資本のSIer企業のことです。多くは日本に事業を展開している海外企業で、活動範囲は国内市場に限定されず、グローバルな規模の仕事に関わることも少なくありません。また、社内のルールも日本のような年功序列などの制度は存在せず、海外基準に設定されている企業が多い点が特徴です。

関連記事:SIerとは?独立系、メーカー系などの種類をわかりやすく解説

ユーザー系SIerの代表的な企業一覧

業界別の代表的なユーザー系SIer企業は以下のとおりです。
※()内には親会社・親組織を記載しています。

金融系
  • ・東京海上日動システムズ株式会社(東京海上グループ)

    ・ニッセイ情報テクノロジー株式会社(ニッセイグループ)

    ・三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社(三菱UFJフィナンシャル・グループ)

通信系
  • ・株式会社NTTデータ(NTTグループ)

    ・京セラコミュニケーションシステム株式会社(京セラ株式会社/KDDI株式会社)

    ・SBテクノロジー株式会社(ソフトバンク株式会社)

    ・株式会社JSOL(株式会社NTTデータ/株式会社日本総合研究所)

商社系
  • ・伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(伊藤忠商事グループ)

    ・SCSK株式会社(住友商事グループ)

    ・日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社(タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社/三菱商事株式会社)

    ・三井情報株式会社(三井物産株式会社)

製造系
  • ・日鉄ソリューションズ株式会社(日本製鉄グループ)

    ・株式会社トヨタシステムズ(トヨタグループ)

    ・ソニーグローバルソリューションズ株式会社(ソニーグループ株式会社)

    ・インフォコム株式会社(帝人株式会社)

コンサルティング系
  • ・株式会社野村総合研究所(野村ホールディングス株式会社/野村アセットマネジメント株式会社/ステート・ストリート・バンク・アンド・トラストカンパニー/野村ファシリティーズ株式会社/ジャフコグループ株式会社)

小売系
  • ・イオンアイビス株式会社(イオングループ)

    ・株式会社セブン&アイ・ネットメディア(株式会社セブン&アイ・ホールディングス)

    ・株式会社JFR情報センター(J.フロント リテイリング株式会社)

エネルギー系
  • ・株式会社テプコシステムズ(東京電力ホールディングス株式会社)

    ・東京ガスiネット株式会社(東京ガス株式会社)

    ・株式会社オージス総研(大阪ガス株式会社)

物流・運輸系
  • ・株式会社JR東日本情報システム(東日本旅客鉄道株式会社)

    ・ヤマトシステム開発株式会社(ヤマトホールディングス株式会社)

    ・東急テックソリューションズ株式会社(東急グループ)

建設系
  • ・株式会社TAKシステムズ(株式会社竹中工務店)

    ・住友林業情報システム株式会社(住友林業株式会社)

その他
  • ・株式会社電通国際情報サービス(株式会社電通グループ)

    ・NRIネットコム株式会社(株式会社野村総合研究所)


上記のとおり、ユーザー系SIer企業の業界は多岐にわたります。また、大手企業を親会社に持つ企業が多く、盤石な基盤があることがわかるでしょう。

ユーザー系SIerの年収

レバテックキャリアの募集では、ユーザー系SIerを含めたSIer企業の平均年収の相場は約400万円~700万円。一方、国税庁の「令和2年分 民間給与実態統計調査」p15によると、1年を通じて勤務した給与所得者の1人当たりの平均給与は約433万円です。企業全体と比較して、SIer企業の給与水準が高いことがわかります。

SIer企業では新卒の場合でも平均年収は約300万円〜400万円程度が相場とされており、ユーザー系SIerに入社後、キャリアを積めば1,000万円以上の年収を得ることも期待できるでしょう。

ユーザー系SIerの将来性

ユーザー系SIer企業の将来性は、親会社の方針や業績に左右されやすい傾向にあります。先述したとおり、多くのユーザー系SIer企業の親会社は大手企業です。安定した基盤があり、基本的に仕事の依頼がなくて困ることはないでしょう。一方で、親会社の業績が下降気味であったり、赤字だったりする場合は、その影響をダイレクトに受ける可能性があります。そういった場合でも、経済産業省の「IT分野について」p2では、2030年にはIT人材の不足人数は78.9万人に達するとも予測されており、ユーザー系SIerで経験を積めば、市場価値の高いIT技術者として幅広く活躍できるでしょう。

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3. ユーザー系SIerのメリット・デメリット

ここでは、ユーザー系SIerのメリットとデメリットについて解説します。

ユーザー系SIerのメリット

ユーザー系SIerには、以下のようなメリットがあります。
 

  • ・親会社から案件を受注できるため経営が安定しやすい

    ・納期や予算にストレスを感じずに働ける

    ・上流工程から携わりスキルや知識を身に付けられる

    ・客先常駐が少なく自社で落ち着いて働ける

    ・福利厚生が充実していることが多い


ユーザー系SIer企業は、親会社から案件を受注できるので経営が安定しやすい点が大きなメリットといえるでしょう。また、親会社を持たないほかのSIerと比べ、案件の納期や予算の融通が効きやすく、ストレスを感じずに働くことができます。

さらに、基本的に客先常駐ではなく自社で開発を行うので、落ち着いて働ける点もメリットです。システム開発においても上流工程から携わることが多く、専門的なスキル・知識に加え、マネジメントスキルも身に付けることができるでしょう。

ユーザー系SIer企業の多くは、親会社やグループ企業と同様の充実した福利厚生を導入・整備しており、いわゆる「ホワイト」な環境のなかで働ける点もメリットです。

ユーザー系SIerのデメリット

ユーザー系SIerのデメリットには、以下のようなことが考えられます。
 

  • ・親会社の業績の影響を受けやすい

    ・下流工程のスキルを身に付けにくい

    ・年功序列の文化があり昇進しにくい


先述したとおり、ユーザー系SIerは親会社の業績や方針の影響を受けやすい傾向にあります。したがって、親会社の経営状況が悪化すれば、職場環境が大きく変化する可能性があるでしょう。また、業務の面では、管理者側として上流工程の仕事を担うことが多いため、下流工程であるプログラミングやテストなどの実務にふれる機会が少なく、スキルを身に付けにくい場合がある点がデメリットです。

そのほか、親会社からの出向者が多いユーザー系SIer企業には、年功序列の文化があることも少なくありません。そういった企業では、実力があっても昇進昇給しにくいというデメリットもあります。

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4. ユーザー系以外のSIerのメリット・デメリット

ここでは、ユーザー系以外の種類のSIerのメリットとデメリットについて解説します。

メーカー系のメリット・デメリット

メーカー系SIerのメリットは、基本的に親会社から案件を受注できるため経営が安定しやすく、また大きな環境の変化によるストレスを受けにくいという点が挙げられます。
その一方で、昔ながらの案件を担当する場合、古い技術をその案件のためだけに身に付けなければならなかったり、自社製品以外のメーカー製品に触れる機会がほとんどなかったりする点がデメリットです。

独立系のメリット・デメリット

独立系SIerのメリットは、さまざまな業界の企業と自由に仕事ができるため、幅広い知識や技術を身に付けることができる点です。また、小規模の企業が多いため、各社員の裁量権が大きいことも魅力の一つといえるでしょう。

しかしその一方で、ユーザー系・メーカー系のように親会社から安定的に仕事を受注することはできないため、経営が不安定になりやすいというデメリットがあります。

コンサル系のメリット・デメリット

コンサル系SIerのメリットは、仕事を通じてさまざまな業界のクライアントと関わることができるという点です。また、各クライアントが抱えている課題とその解決方法は千差万別であるため、案件ごとにクリエイティブさを発揮することができます。ルーティンワークが苦手な方にとっては魅力的の大きい仕事であるといえるでしょう。

しかし裏を返せば、クライアントとのやり取りやチームマネジメントなど、業務上コミュニケーションが重要になる場面が多いということです。コミュニケーションに苦手意識がある方にとっては、苦労を感じやすいというデメリットがあります。

外資系のメリット・デメリット

外資系SIerのメリットは、国内市場に関わらず世界規模の案件に関わるチャンスがあることです。また日本企業のように年功序列などのルールは存在せず、原則、実力主義の企業が多いという特徴もあります。そのため、実力さえあれば年齢や経験年数に関わらずグローバル市場へ挑戦することも可能です。

しかし裏を返せば、企業内で活躍するためには、ほかの社員との競争に勝ち続けなければならないということになるため、向上心や継続的な努力が欠かせないでしょう。

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5. ユーザー系SIerで働きたい学生がやるべきこと

最後に、ユーザー系SIerで働くために学生のうちにやるべきことについて解説します。

資格の取得

ユーザー系SIer企業で働くために、必ず取得しなければならない資格はありません。しかし、資格の取得を目指して勉強することで、IT業界で働くうえで必要な知識について体系的に学ぶことができます。また、資格の試験内容は常に最新のものに更新されているため、試験勉強をする過程で、IT業界の最新技術や情報を知ることもできるでしょう。

資格の種類は数多くありますが、未経験・新卒の方であれば、まずはITの入門的な試験といわれる「ITパスポート」や「基本情報技術者試験」がおすすめです。そのほか、各プログラミング言語の認定試験なども取得しておくと、就職選考でアピールできるでしょう。

長期インターンシップへの参加

長期インターンシップへの参加は、実際にユーザー系SIer企業で働くとはどのようなものなのかを知るための最良の方法であるといえるでしょう。

インターンシップとは、学生が興味のある企業の職場を体験できる制度です。インターンシップは、実施される期間により、短期・中期・長期の3種類があり、半年から1年間ほど実際の業務の一部を担当することができるものを長期インターンシップと呼びます。

ユーザー系SIer企業の長期インターンシップに参加することで、現場で求められる実務的なスキルやコミュニケーションスキルを磨けるだけでなく、会社の雰囲気を体感し、自身の適性を確かめることもできるでしょう。

プログラミングスキルの習得

上述した通り、ユーザー系SIerで働く社員は、基本的にシステム開発において管理側の仕事を担当することになりますが、最低限のプログラミングスキルは身に付けておかなければなりません。プログラミングを学習する方法としては、学習サイトや参考書を使用する、プログラミングスクールに通うなどが挙げられます。それぞれのメリット・デメリットを知ったうえで、自分に合う方法でスキルを習得すると良いでしょう。

学習サイトや参考書を使用する

学習サイトや参考書を使用して学ぶ方法は、時間や場所を選ばず自分のペースで学べる点やコストを掛けずに学習をスタートさせられる点がメリットでしょう。しかし、わからないことが出てきたときに相談する相手がいないので、問題を解決できずに挫折してしまう人も少なくありません。また、学習サイトや参考書の場合、最新情報を網羅していなかったり、基礎的な内容の学習のみで実務で必要なレベルのスキル習得まではできなかったりすることもあるようです。

プログラミングスクールに通う

プログラミングスクールでは、実務レベルのスキルや知識を効率よく、短期間で身に付けることができるというメリットがあります。また、分からないことはいつでもインストラクターに質問できるので挫折しにくいという点も魅力の一つでしょう。一方で、学習サイトや参考書を使用して独学でスキルを学ぶよりも高額な費用がかかるというデメリットもあります。

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企業研究

ユーザー系SIer企業で働くことを希望する方は、事前に企業研究を行うことが大切です。Webサイトで調べたり、会社説明会やインターンシップに参加したりするほか、OB・OG訪問をするなどして、企業の事業内容や特徴、待遇などをしっかりと確認しておきましょう。企業についての理解を深めておけば、選考面接で的確なアピールができるだけでなく、入社後のミスマッチを防ぐこともできます

企業研究を行う際のポイントは、希望するユーザー系SIer企業だけに絞らず、できるだけ多くの業界・企業を調べることです。応募する企業の選択肢の幅が広がり、内定をもらえる可能性も高くなります。

関連記事:就活で企業選びの軸が重要な理由

キャリアプランの明確化

自身のキャリアプランを明確にしておくことも、ユーザー系SIer企業で働く前にやるべき準備の一つ。ひとくちにユーザー系SIe企業といっても、業界や強みとする領域、企業規模はさまざまです。「将来、どのような分野で活躍するIT人材になりたいのか」を明らかにすることで、どのユーザー系SIer企業で働くのが自分にとって最適かが見えてくるでしょう。応募書類や面接でも、キャリアプランと絡めて志望動機を伝えれば説得力が増し、プラス評価に繋がりやすくなります。

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6. まとめ

SIerには5つの種類が存在し、一般企業の情報システム部門が子会社として独立したSIerがユーザー系SIer企業です。

ユーザー系SIer企業の親会社は大手企業であることが多く、安定して案件を受注でき、ホワイトな環境のなかで仕事ができる点がメリットです。一方で、親会社の業績が悪化した場合は、その影響を受けやすかったり、担う業務は上流工程が中心のため下流工程のスキルを身に付けにくかったりするなどのデメリットもあります。

こうしたメリット・デメリットを理解したうえで、ユーザー系SIer企業への就職を希望する場合は、企業研究や資格の取得、プログラミングスキルの習得といった事前の準備をしっかりと行いましょう。

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