SESとは?新卒入社するメリットと「やめとけ」と言われる理由

SESとは?新卒入社するメリットと「やめとけ」と言われる理由
就職活動でIT企業を目指す場合、「SES(エスイーエス)」という言葉を見聞きすることが多いでしょう。SESで働くエンジニアは、いわゆる派遣のような形でクライアント企業へ出向して、さまざまな職場を渡り歩きながら開発業務に携わるのが特徴です。未経験・スキルなしでもIT業界に挑戦しやすいので、文系学生の就職先としても人気の業種です。 一方で就活では、「SESはやめとけ」と言われるケースも少なくありません。自社開発のIT企業と比べると給料が安くなる傾向にあり、環境の変化にストレスを感じるタイプの方にも不向きです。しかしSES企業のメリットをしっかりと理解し、将来のキャリアパスを描きながら入社するのであれば、ITの上位職を目指すための最適な入口にもなりえます。 ここではSES企業への就職を考えている学生向けに、SESと派遣・SIerとの違いや仕事内容、入社するメリット・デメリットについてご紹介します。優良なホワイト企業の見極め方についても解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。

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1.SES(System Engineering Service)とは?


IT業界で使われる「SES」という言葉は、「System Engineering Service」の頭文字を取ったものです。システムエンジニアリングサービス、つまりシステム開発を受注することで、クライアント企業から対価を受け取る契約を指します。いわゆる「客先常駐」もSESの一種で、雇用された企業のオフィスではなく、クライアント企業のオフィスでエンジニアとして働きます。

クライアントへ技術力・労働力を提供する契約


SESという言葉は、IT企業が提供するサービスの一つとして使われます。自社で採用したエンジニアをクライアント企業に派遣し、クライアント企業からの対価を得るSES事業を手掛けている会社が、SES企業と呼ばれます。SESにより派遣されたエンジニアは、決められた労働期間の間、クライアント企業で働き労働力を提供します。

IT業界では慢性的な人手不足が続いており、繁忙期・閑散期によって必要な労働力も変化する性質があります。大型のプロジェクトを受注した時にだけ、SES企業からエンジニアを派遣してもらい、開発効率を上げるために利用されるのが一般的です。

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SESと派遣の違い

SESは人材派遣とよく似た仕組みですが、両者には「指揮命令権」に大きな違いがあります。SES契約で出向するエンジニアは、エンジニアが在籍するSES企業からの指揮命令を受けます。一方で派遣契約で出向するエンジニアの場合、派遣先のクライアント企業からの指揮命令を受けるのが大きな違いです。

SES企業でエンジニアとして働く場合には、具体的な指示や命令はクライアント企業ではなく、SES企業から受けることになります。クライアント企業で働くものの、クライアント企業から直接指示や命令を受けないことが大きな特徴です。

SESとSIerの違い

システム開発を受注する場合、クライアント企業からの発注を受けて自社内で開発・運用する企業も多く、そうしたビジネスモデルの企業はSIer(受託開発)と呼ばれます。SESがエンジニアという労働力や技術力を提供するのに対して、SIerは自社で開発したシステムを提供する点に違いがあります。

SIerでは、契約や対価は主に「成果物」によって決まるのが特徴です。どれだけ開発業務を行ったか、何人のエンジニアで開発したかは関係なく、成果物への対価を受け取り、契約が完了します。SESは客先常駐で働くケースが多いですが、SIerは自社勤務で働くエンジニアが多い傾向です。

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2.SES企業での働き方・仕事内容

SES企業に採用された場合、勤務先がSES企業ではなくクライアント企業であるという点を除けば、一般的なITエンジニアと同様の仕事内容に携わります。

たとえば、システム開発や運用・保守、ドキュメント作成などが挙げられます。プロジェクトごとの仕事内容は、事前にSES契約によって定められているため、出向後に事前に聞いていたものとは大きく異なる仕事を割り振られることはありません。SES契約で定めた勤務時間以上働くことはなく、残業も発生しません。

ただし、契約期間が終了して別のクライアント企業やプロジェクトに切り替わる際には、仕事内容が大きく変わることがあります。

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3.SES企業のエンジニアの平均年収

SES企業で働くエンジニアの平均年収は、20代の場合で約350万円〜400万円が目安です。新卒入社の初任給では、年収300万円が目安となるでしょう。

SES契約の場合、エンジニア自身が提供できる技術力や労働力に対価が支払われます。高いスキルを持ち、短時間で効率的に成果を残せるエンジニアほど高収入になりやすく、入社直後や経験が浅いうちは給料は低くなる傾向です。また、クライアント企業に直接雇用されるのではなく、SES企業が間に入ることで中間マージンが発生するため、直接雇用されているエンジニアと比べるとやや年収は低くなります。

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4.SES企業のエンジニアの将来性・キャリアパス

SES契約は、IT業界が慢性的に抱えている人手不足という課題を解決する手段の一つであり、IT業界でも高い需要が続いています。そのためSES企業への需要も減少することは考えにくく、将来性の高い就職先と言えるでしょう。

また、SES企業で経験を積んだエンジニアは、さまざまなプロジェクトを経験した経験豊富なエンジニアというイメージにつながり、その後のキャリアパスや転職を考える時にも有利になります。携わる案件に希望を出せるSES企業であれば、自分が目指すキャリアビジョンに合わせて出向先を選び、効率よくスキルと経験を伸ばしていくことも可能です。

SES企業では現場でのプログラミング作業に従事することが多く、上流工程の経験を積みにくいため、SES企業でスキルを伸ばした後は上流工程に携わるSIerなどに転職すると、エンジニアとしてのステップアップを叶えられるでしょう。

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5.SES企業に新卒入社するメリット

続いて、就活でSES企業を選んで新卒入社するメリットについて、以下の5つをご紹介します。
 

  • ・未経験・スキルなしでも内定を取りやすい

    ・幅広いプロジェクトを経験できる

    ・残業や休日出勤が少ない

    ・人間関係の悩みが少ない

    ・人脈やコネクションを作れることも


上から順番に解説しますので、就活での企業選びの参考にしてみてください。

未経験・スキルなしでも内定を取りやすい

SES企業はクライアントからのニーズに応えるため、経験・スキルを問わず幅広い人材を積極的に募集しているため、プログラミング未経験でも内定を得やすいメリットがあります。情報系出身の学生や、プログラミングで華やかな実績を持つ学生ではなくとも、正社員として採用される可能性が高いです。

そのためIT業界のキャリアをスタートするのに最適で、自分が思い描くキャリアビジョンを実現するための第一歩として応募するのもおすすめです。また、独学でもプログラミングに携わった経験をアピールできると、ライバルの学生よりも有利に選考を進めることも可能です。

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幅広いプロジェクトを経験できる

SES企業で働くエンジニアは、契約ごとにさまざまなクライアント企業やプロジェクトに携わるため、幅広い経験を積めるメリットもあります。有名企業のオフィスで働く経験や、誰もが知るシステムの開発に従事した経験は、成長の糧になるだけではなく開発経験をアピールする際にも有効に働きます。

業界ごとの知識や経験を身につけた上で、異なるジャンルでのスキル・経験を組み合わせ、ユニークな人材として活躍することもできるでしょう。案件の希望を出せるSES企業の場合には、特定のジャンルに特化してスキル・経験を伸ばすことも可能です。

残業や休日出勤が少ない

SES契約のもとで働くエンジニアは、契約内容で労働時間と対価が定められているため、規定の労働時間を超えて働かされることはありません。そのため残業や休日出勤は原則として発生せず、ワークライフバランスの取れた働き方を実現することが可能です。

直接雇用されたエンジニアの場合、成果物の納期前に残業が発生することも珍しくありません。一方のSES契約の場合には、成果物に対価が支払われるのではなく、労働力(労働時間)に対価が支払われるので、成果物の進み具合について責任を負う必要がないのもメリットです。

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人間関係の悩みが少ない

SES契約の場合、定期的に職場環境が変化するため、一つの職場の人間関係に悩まされることが少ないメリットもあります。職場環境やプロジェクトが切り替わることで人間関係がリセットされ、また新たな気持ちで働き始めることができます。苦手な相手がいる職場で長く働き続ける必要がないため、ストレスなく開発業務に取り組みたい方に向いています。

なお、SES企業によっては個人単位ではなく、チーム単位で客先常駐を行うケースもあります。見知らぬ環境で一人で働くのが不安な場合には、チーム単位でのSES契約を行っている企業を選ぶことで、安心して働けるようになるでしょう。

人脈やコネクションを作れることも

SES企業に在籍して働くエンジニアは、さまざまな企業やプロジェクトに携わる中で多くの人と関わる機会があるため、人脈やコネクションを広げるチャンスにも恵まれています。多くの企業やエンジニアとの信頼関係を築いておくことにより、仮に将来独立してフリーランスのエンジニアになった場合にも、人脈を駆使して案件を獲得できるかもしれません。

ただし受け身の姿勢では人脈を広げることは難しいので、能動的に周囲の人々と関わる姿勢が大切です。

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6.就活で「SESはやめとけ」と言われる理由

一方で就活では、IT業界を目指すとしても「SESはやめとけ」と言われることが少なくありません。その理由として、次の5つが挙げられます。
 

  • ・給料が安くなる傾向がある

    ・上流工程の経験を積みにくい

    ・環境の変化によるストレスを受ける

    ・一貫したキャリアを構築しにくい

    ・企業やチームへの帰属意識が薄れてしまう


一つひとつ順番にご紹介しましょう。

給料が安くなる傾向がある

SES契約の場合、直接契約と比較するとSES企業による中間マージンが差し引かれるので、給料が安くなる傾向があります。クライアント企業が支払うSES費用は、そのままエンジニアへの給料に充てられるわけではなく、SES企業の利益が差し引かれています。直接クライアント企業に雇用されていれば受け取れるはずの給料が、SES企業に天引きされているとも言えます。

SES企業に利益が残らなければ、新卒社員の教育・研修や、好条件の案件の獲得が難しくなるため、天引きされること自体が悪いわけではありません。しかしスキルや経験が身につき、自分にとってやりたい仕事やキャリアパスが明確になったタイミングで、自社開発や受注開発を手掛けるIT企業への転職を考える方が、給料面では有利になるでしょう。

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上流工程の経験を積みにくい

SES企業で働くエンジニアは、基本的には下流工程と呼ばれるプログラミングの現場作業に携わることが多いです。要件定義やマネジメントといった上流工程は、SES契約のエンジニアには任されることが少なく、上流工程のスキルが身につきにくいデメリットがあります。

高収入や好待遇を受けられる企業に転職したい場合、上流工程の経験が豊富なエンジニアの方が優遇されることも多いです。上流工程の経験豊富なエンジニアは少なく、どの企業も好待遇で迎えようと考えるからです。ただし、上流工程を経験するために下流工程での経験も欠かせないため、SES企業でじっくりと経験を積みながらキャリアプランを考えると良いでしょう。

環境の変化によるストレスを受ける

SES企業のエンジニアは、プロジェクトが完了するごとに職場環境が切り替わるため、環境の変化によるストレスを受けやすい職種です。環境の変化を楽しめるタイプであれば問題ありませんが、異なる環境に飛び込むことが大きなストレスに感じられる場合には、SES企業は避けた方が良いかもしれません。

職場環境の変化は苦手だが、チーム単位での客先常駐であれば、信頼できる仲間がいるので問題ないと感じるタイプの方もいます。そのためSES契約での働き方に不安がある場合には、応募する企業がどのような形で客先常駐を行っているのかを企業研究しておき、自分の理想の働き方とかけ離れていないかをチェックしておくと安心です。

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一貫したキャリアを構築しにくい

SES企業に入社するエンジニアは、一つのプログラミング言語やプロジェクトにおいて一貫したキャリアを構築しにくいデメリットも挙げられます。SES契約自体が、一つのプロジェクトを深く・長く携わるよりも、さまざまなプロジェクトに広く・浅く携わる働き方のため、一つの分野のプロフェッショナルを目指したいと考える方には不向きです。

一方で、どの分野を突き詰めたいのかがまだ明確になっていない方の場合、複数のプロジェクトの経験を通じて、自分の興味や適性を深掘りしやすい環境でもあります。「IT業界に興味があり、エンジニアになりたいが、どのジャンルが自分に合っているのかわからない」と悩んでいる場合には、SES企業でさまざまな現場を見て回るのも良いでしょう。

企業やチームへの帰属意識が薄れてしまう

SES契約で働くエンジニアの場合、プロジェクトごとに職場環境や周囲の人間関係が変わり、在籍しているSES企業の社内で働く機会も少ないため、一つの企業やチームへの帰属意識が薄れてしまう面もあります。出向先で孤独を感じて退職を考えるようになったり、深い人間関係が築けずにモチベーションが低下してしまったりするケースも考えられます。

こうしたデメリットが気になる場合には、定期的に社内イベントを開催してコミュニケーションを取る機会を設けるなど、社内交流に積極的なSES企業を選ぶことをおすすめします。毎回同じチーム単位で客先常駐するSES企業であれば、チームへの帰属意識も持ちやすくなるでしょう。

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7.ホワイトで優良なSES企業を見極めるコツ

最後に、就活でホワイトで優良なSES企業を見極めるための3つのコツについても解説します。応募しようとしている企業が以下のポイントに当てはまっているかどうか、ぜひチェックしてみてください。
 

  • ・一次請け・二次請けの案件が中心である

    ・バランスの良い年齢層が在籍している

    ・自社開発の実績も豊富


上から順番にご紹介します。

一次請け・二次請けの案件が中心である

待遇や労働環境が良いSES企業を選ぶためには、一次請け・二次請けを中心に受注していることを確認してみましょう。なるべく多重下請け構造になっておらず、クライアント企業との意思疎通が図りやすい案件の方が、働きやすい傾向にあるからです。一次請け・二次請けが中心のSES企業は、優良な案件を獲得するための営業力が高く、今後も良い条件のプロジェクトに参加できる可能性が高まります。

営業力が高く利益率も高いSES企業であれば、エンジニアの待遇が良いことに加え、希望する条件のプロジェクトを回してくれることも多いため、積極的に応募することをおすすめします。

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バランスの良い年齢層が在籍している

SES企業に限らずホワイト企業を選ぶポイントとして、若手・中堅・ベテランの偏りがなく、バランスの良い年齢層が在籍していることを確認しておくのも大切です。ベテランばかりが残っている企業は、古い体質で若手が定着しにくい理由が考えられますし、ベテランが少なく若手ばかりの企業もブラック企業である可能性が高まります。

年齢層の偏りが少ないということは、人事の採用戦略が優れていたり、会社としての魅力が高く人材が集まりやすい企業でもあるので、入社後も働きやすい環境で活躍できるでしょう。

自社開発の実績も豊富

SES事業に加えて、自社製品の開発実績も豊富なIT企業であれば、優良なホワイト企業である可能性が高いです。エンジニアを出向させて利益を得るSESのビジネスモデルに加えて、自社製品の開発で利益を確保するビジネスモデルも構築している企業は、安定した基盤のおかげで働きやすい職場環境が整っていることが多いです。

特に自社開発を行うためには、資金・人材ともに豊富なリソースが必要になるため、十分な体力を持った企業と判断できます。そうした環境に身を置くことで、自分自身のスキルアップ・キャリアアップを叶えつつ、ストレスのない働き方を実現できるでしょう。

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8.まとめ

SESとは、自社で採用したエンジニアをクライアント企業に出向させ、労働力を提供することで対価を得るビジネスモデルです。派遣とは異なり「指揮命令権」をSES企業が持っていることが特徴で、成果物ではなく労働時間で契約内容が決まるため、残業や休日出勤が発生しないことがメリットに挙げられます。

一方でSES企業で働くエンジニアは、同じ仕事内容のエンジニアよりも給料が安くなる傾向にあり、上流工程の経験を積みにくいなどのデメリットもあります。人材を使い捨てにするようなブラック企業を避けるためにも、本記事で解説してきた見極めのコツを参考にしながら、就活での企業選びに役立ててみてください。

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